病院に駆け込むと、すぐに看護師さんたちが集まってくれた。
「三日月さんが倒れた」
僕がそう告げると、どこからともなく担架がやってきた。彼女を担架で運びながら、僕はそのあとを駆け足で追いかける。


それから一室に運び込まれた彼女。

「きみは、ここで待っていて」

処置をしている間、僕は廊下で待った。

五分、十分、二〇分と過ぎる。
僕の目の前を行ったり来たり慌ただしい看護師さん。「あのっ」たまらず声をかけた僕。


「……三日月さんは、ただの風邪じゃないんですか?」


聞かずにはいられなかった。

彼女を抱きかかえたときの軽さが、いまだに手のひらに残っている。

あまりにも軽くて、消えてしまうんじゃないかと怖かったから。


「きみは、彼女のご家族ですか?」

「あ、いえ……友人です」


ぎこちなく答えると、そう、と眉を下げながらチラッと腕時計に目を落としたあと。


「ご家族以外の方に彼女の容態を教えるわけにはいかないの」

「容態? 三日月さん、どこか悪いんですか?」

「ごめんなさいね。何も教えられないの」


僕の問いかけに答えることもなく、慌ただしくパタパタと音を鳴らしながら駆けて行った。

その音だけが虚しく響いて、嫌に耳にこびりついていた。


ただの風邪ならこんなふうに看護師さんが慌ただしくなるはずがない。
ただの風邪なら“容態”とは言わない。

だとすれば、彼女には何か秘密があって……