「え、隠してること? やだなー。そんなこと、ないよ……?」


笑って誤魔化しているようだったけれど、わずかに目線が下がった。それを、僕は見逃さなかった。


「嘘でしょ、それ」

「え? だから嘘じゃないって…」


もう何言ってるの、誤魔化して逃げようする彼女に「だって三日月さん」言葉を続けた僕は、


「いつも僕と話すとき、目を見て話す。先に逸らすのは、いつも僕だった。でも今は逆。三日月さんが先に逸らしたんだよ」


決定的な証拠を突きつけると、下唇をわずかに噛んだ。


やっぱり何か隠してるんだ……。


「ねぇ、三日月さん。僕に話してくれない?」

「だ、だから何を」

「三日月さんが抱えてるもの」


気づいたら僕は、そう言っていた。

「え」困惑した彼女は、僕を見上げた。少しだけ、震えているような瞳で、真っ直ぐに。


「僕、この前の三日月さんの言葉が気になったんだ。ううん、多分それよりもずっと前。何か、引っかかってた。三日月さんのこと」


どうしてそんなことを言ってしまったのか自分でもよく分からなかった。

でも、


「決定的なのは、この前の言葉。『限りある命の中で私は一生懸命自分が生きた証を残したいの。こんなに楽しい人生だったんだよって、みんなに残したいの』って。それが僕、引っかかってて……」