「おーい、藍原」
けれど、すぐに聞き覚えのある声が聞こえて、僕は文庫本から意識をスライドさせると、小武がやって来た。
「なんか三日月さん体調崩して休んでるんだってよー」
「はっ? まじで?」
「うん、隣の担任がそんなこと言ってるの聞こえてきてさぁ」
体調崩して……
やっぱり、流星群なんか見に行ったから。
……僕の、せいだ。
文庫本をパタンと閉じて、机の中からスマホを取り出す。
「おい、何してんの?」
いきなり声をかけられるから戸惑って「へっ?」声が上擦ってしまう。
「スマホで誰かにメッセージでも送んのか?」
「あ、いやー、べつに……」
「ふーん」
三日月さんの連絡先知ってるなんて知られたら絶対教えろって言われそうだよな、と。渋々、スマホを閉まった。
僕を怪しむように見るから、なるべく動揺しないように、また文庫本へと手を伸ばす。
けれど、僕の頭は三日月さんのことでいっぱいだった。
不安と心配と罪悪感で、支配される。
「あーあ」
頭を抱えて項垂れる藍原は、
「三日月さんに会えねえのはつらいなぁ……」
「少しくらい我慢しろよ」
「いや、だってよー、あの天使を見れないってなるとすっげぇパワーがなくなんの」
よっぽど三日月さんのことが好きなんだな。
「あー、会いたい」
恥ずかしげもなく呟くから、逆にこっちが恥ずかしくなる。