ここがどこだが忘れて、ポケットからスマホを取り出すと、空へと両手をかざす。
不安定な身体は、少しグラついている。それでも彼女は、目の前の流星群に夢中で、そんなことおかまいなし。
「ぅわっ!」案の定、後ろへグラついた身体。倒れる姿を見た僕は、咄嗟に手を伸ばす。その瞬間、まるでスローモーションのように、ゆっくりゆっくりとコマ送りになる。
「っぶ、ない……」
ギリギリのところで抱きとめた僕のすぐそばに、彼女がいて。
ふわっ─、ほのかに香るボディーソープの匂い。優しくて温かくてお花の匂いがする。
──そのわずかな時間、僕は彼女を抱きとめたままなことを思い出し「ごめんっ」慌てて離れるけれど、返事がなくて。
「……三日月さん?」
おそるおそる顔を見ると、ポカンと固まったまま微動だにしない。
「あの」もう一度声をかけると、へ、と気の抜けた声をもらして、瞬きを繰り返したあと、
「こ、怖かった……」
彼女の顔は、恐怖で歪んでいた。
どうやら後ろへ倒れたことがよっぽど怖かったらしい。
僕が、嫌だったわけじゃなくてホッとした。
「……大丈夫?」
「な、なんとか」
「流星群に夢中になるのはいいけど、ここジャングルジムのてっぺんだから気をつけてね」
「……うん」