一つのことに夢中になると、もう一つのことは完全に忘れてしまう。まさにそれと同じだ。
「向葵くんってば、ほんと意地悪!」
なんて言いながらポスッと、僕の腕をグーで叩くけれど、全然痛くはなかった。
それにほんとに怒ってるわけじゃなさそうで。
だって、笑ってるし。楽しそうに。
「あっ!」
また、空に指をさす。
目をキラキラと輝かせて、その横顔はすごく可愛くて。
「ね、見た見た?!」
指をさしながら目線だけは僕の方へ向いていた。「いいや」と首を振ると「もう〜」と悔しそうにジタバタする。
「ちょ、危ないから落ち着いて」
「だってだって。せっかく綺麗な流星群なのに向葵くんまだ見れてないんだもん!」
「とにかく危ないから、じっとして」
「むー」頬を膨らませながら、渋々静かになる三日月さんを見てホッとする。
なんだろう、この感じ。
まるで小さな子どもをあやすような気分?
……ああ、絶対それだ。それしかない。
「……なに?」
不貞腐れた子どものように僕を見つめる。
今ここで、僕が三日月さんに『子どもをあやしてるみたい』って言ったら絶対拗ねる。
なんなら僕、ここから突き落とされそうだし。
「あ、いやーべつに……」
フイッと視線を逸らしたあと、おもむろに空を見上げる。