それからしばらくして、飲み終えた僕は地上へと降りた。
ここだけ聞けば、僕は空でも飛べるのかと思ってしまいそうだけれど、そうじゃない。ただ、ジャングルジムから降りた、だけだ。

三日月さんは、残り半分ってところでリタイアで。公園内にあった水道で残りの中身を捨てて軽くゆすいだあと、僕は空き缶二つをゴミ箱へと捨てた。


「あ」僕がジャングルジムに背を向けていると、後ろから声が響く。
何だ、と思って振り向くと「空! 空!」と子どものように連呼して空へと指をさす。


「……?」


言われるがまま空を見上げるけれど、何も変化はない。

さっきの仕返しに騙された?

なんて考えながら、またジャングルジムへと向かって登る。


「ねぇ、向葵くん。さっきの見えなかった?」

「なにが?」

「だから流星群! 一つ流れたの! ものすごいスピードで!」


なるほど。ものすごいスピードなら、僕が見えなかったのも頷ける。


「……で、お願いはしたの?」


隣に腰掛けると「あっ」と声をもらすから、視線を向けると、えへへ、と照れくさそうに頬をかいた。


「忘れてたの?」

「そう、みたい……」


流星群を見たらお願いをしたいと言っていたのに、それすら忘れて流星群に夢中になるなんて。


「子どもみたいだね」

「それって私のこと?」

「それ以外にいないじゃん」