「買うときにすでにおいしくないって分かってて買ったわけ?」


ほらみろ。三日月さん、確信犯じゃないか。


「見るからに名前がおいしくなさそうじゃん! なに“梅ソーダハニー”って。でも、そこに惹かれたの! これ、一緒に飲んでみたらどんな反応するのかなって」


僕は、三日月さんが買って来てくれた手前言うのは控えていたけれど。完全においしくないと断言した三日月さん。


「で、どうだったの?」

「酸っぱくて炭酸なのに甘いってなに! ソーダにも負けない梅がすごい強烈だし、でも後味のハニーが梅と混ざって不協和音……」


つまり、まずい、というわけだ。


舌を出して顔を歪める三日月さんの姿を、学校の人たちは見たことあるのだろうか。

……いや、きっとないんだろうな。三日月さんは、周りの人と話しているときはわりとおしとやかに振る舞っている。
だから藍原だっていまだに『可愛いとか天使』とか言ってる。

本性を知らないって恐ろしいな。


ゴクッ、のどを鳴らしてもう一口飲む。

やっぱり複雑な味がして後味もビミョーではあるけれど、捨てるのも忍びないし。


「ねぇ、向葵くん。無理して飲まなくていいんだよ?」

「これ、そんなに言うほどまずくないし大丈夫」

「え、ほんとに? さっきあんな顔してたじゃん。おいしくないんでしょ?」


梅ソーダハニーを飲む僕を見て、目が点になる三日月さん。