僕だけは違う?

それって、僕が周りより暗くて目立たないからって言いたいのか?

……なんだよそれ。


「……全部、自分の勝手な妄想だろ」

「違うの。ほんとに私は向葵くんと」


「──僕は!」


大きな声で、彼女の言葉を遮った。

その瞬間、缶ジュースがパキッと音を立てた、気がする。


落ち着け。僕が、感情に流されて声を上げるなんてらしくない。


小さく、ふう、と息を吐いて、キッ、と彼女を睨みつけるように見つめたあと、


「……僕は、きみみたいな人とは友達にならないし青春なんかしない」


吐き捨てるように言ったあと、彼女の前から必死に走った。


返事なんか待たなかった。

だって、これ以上あの場所にいてしまったらいつまで経っても会話は平行線を辿ったままのような気がしたから。


走って走って。どこまでも走った。

肺が潰れそうになるくらい、走った。


そして、ようやくたどり着いた体育館裏の壁に、手をついた。


「……自分、なにやって……」


思わず、口をついて出た。


さっきの僕は、感情まかせに言葉を投げた。それは、自分の失態だ。

けれど、後悔はしてない。

だって、


「……僕は、一人でいい」


今も、そしてこれからもずっと。


どうやら僕には、一人が似合っているらしい。

だから僕が、陽の光を浴びるなんて似合わないんだ──…。