そこまで見たいと言い張るなら、
「流星群に何かお願いしたいことでもあるの?」
僕が尋ねると「えっ」と一瞬だけ固まった。そのときの顔色が変わった気がした。
けれど、すぐに何事もなかったかのように元に戻る。
「特別これといってお願いしたいことがあるわけじゃないけど、流星群見たら何かお願いしたいって思わない?」
「……さあ、思ったことないから」
「えー、それはもったいないなぁ。向葵くん、それ人生の半分くらい無駄にしてるよ!」
告げられて、そういえば藍原にも似たようなこと言われたなぁと思い出し、少しおかしくなって口元を緩めた。
「そんなに綺麗なの?」
「そりゃあもう! 夜空にたくさんの星が流れるんだよ。もうね、言葉では言い表せないくらい綺麗なの。嫌なこと全部忘れて、目の前のそれに夢中になるくらいすごいんだから!」
弾丸のようにとめどなく落とされる言葉は、僕の耳に次々と入り込んでくる。
「へえ、そんなに?」
「うん、もうね、すっごいの!!」
そんなに熱弁されたら少しくらい、
「……見てみたいかも」
思わず口をついて出た僕の言葉を聞いて、へ、とポカンと気の抜けた声をもらす三日月さん。
「な、なに?」
「いや、だって。向葵くんがそんなふうに言ってくれるなんて思ってなかったから」