「僕は三日月さんも知っての通り、暗いじゃん。影も薄いし、目立たないやつだし毎日一人で本読んでるようなやつでしょ。そんなやつと噂されたって、困るのは三日月さんだろ」


自虐めいた言葉を言って、さすがの僕も傷ついて、フイッ、と視線を逸らした。

そんな僕に、前も言ったけど、と前置きをする彼女は、いつのまにか僕の目の前に立ち塞がる。

「ちょ…っ」思わず声をあげながら、立ち止まる僕。あと少しで、彼女にぶつかりそうだったから。


「私、向葵くんが暗いなんて思ったことないよ」

「そ、それは」


確かに前にも言われたことあるけれど、そう思った矢先「それに」と力強く現れた言葉に遮られて言葉に詰まらせていると、


「向葵くんと関わるようになって性格とか分かってきたし、むしろ話せば話してくれるし。本だって読むときはみんな静かに読むでしょ? 向葵くんだけが特別静かってわけじゃない。だから、向葵くんが気にすることなんて何一つないんだよ」


まくし立てられた言葉は、僕の胸を熱くした。

言葉に詰まって何も言い返せずにいると「ね」と僕の顔を覗き込んでくる。
目頭が、ジーンと熱くなっていた僕は、それに逃げるように、


「……知らない」


たった一言、答えて彼女を避けて道に沿って歩く。