「なんで問題なの? 夜は暗くて危ないから?」

「まあ、それもあるけど…」


でも、実際はそんなこともよりもこっちの方が大事で。


「僕と夜会って、周りに変な誤解されたら嫌でしょ」


彼女は、有名な転校生で。だから、夜誰かと会ったら、それはイコール好きな人だと勘違いされかねない。

みんなの頭が藍原と同じならなおさら。

だから、


「夜は、無理だ」


僕は断固として拒否する。

それなのに、


「私はべつに問題ないよ?」


軽く答えるから僕の方が気が抜けて、へ、と声をもらすと、


「だって向葵くん、ふつうにかっこいいし? それに無理やりだったけど私の事情にも付き合ってくれて優しいし、嫌なことは嫌だってちゃんとはっきり言うし」


短く切ったあと、だから、と続けると、


「私は、全然問題じゃないよ」


真っ直ぐ見据えた瞳で、僕を捉えるから。

一瞬、その言葉を受け入れそうになるけれど。


そもそも、僕なんかをかっこいいって?
そんなの絶対に嘘だ。だって今まで僕が、そんなことを言われたことがない。


「いやっ、僕が問題なんだって……!」


声を荒げたあと数歩下がった僕を見て、なにが、と首を傾げる。

ほんとに彼女は理解していないらしい。

だったら、彼女に伝わるように全部言おう。