* * *
「ねえ、向葵くん。今日は、あとで待ち合わせしない?」
帰り道、僕の少し前を歩く彼女が突然そんなことを告げた。
「なに? どういうこと?」
首を傾げる僕に「だから」とくるりと振り向くと、
「今日の夜、流星群が見れるんだって」
「……流星群?」
「うん。なんでも、六月の終わり頃に見られるうしかい座流星群ってのがあるんだけどね、それが今日見られるかもしれないってニュースでやってたの!」
声色を弾ませながら、ほんの少しスキップをしながら彼女は言う。
「だから今日一緒に見ようよ!」
今日の青春の一コマはそれなのかと納得しかけたけれど。
でもさ、それって、
「……いや、夜じゃん。無理でしょ」
思わず口をついて出た僕の言葉に「なんで?」と首を傾げる三日月さん。
なんで、ってそんなの。
「夜だからに決まってるじゃん」
「星は夜に見るものでしょ?」
当然の如く告げられるから、じゃなくて、と慌てて返事をしたあと、
「僕たちが夜に会うことがそもそも問題なんだって」
午前中に散々、藍原たちからからかわれたけれど。
藍原たちが言うには、好きな人とは一緒にいたくなるもの、らしい。
けれど、僕たちはそんな関係ではないし、夜に会うってのがおかしいんだ。