「だって、恋したらすっげぇ世界が変わって見えるんだぞ。キラキラして見えんの! 好きな子の周りとか好きな子自身も! そんなの経験したことないとかもったいねぇなぁ」
楽しげに告げるから、やっぱり藍原は三日月さんに恋してるんだ、と、ふーんと納得した。
「ふーんておまえ。もっと興味持てよな!」
「いや、だって…」
べつに興味ないし、と思わず言ってしまいそうになったところでグッと飲み込んだ。
きっと今の藍原は自分の話を聞いてほしいんだろう。
面倒くさい、なんて思いながらも、しばらく頭の中で考えたあと、
「なんで三日月さんのこと好きって思ったの」
少しだけ、気になった。
“好き”ってどうやったら分かるのか。
だって、三日月さんが転校生としてやって来てまだ一ヶ月も経ってない。それなのに藍原は、彼女を好きだと言う。
それが僕には、謎だった。
「そりゃあ、三日月さんを見た瞬間心が動いたからだよ。なんつーか、ああ好きだなって。胸がときめくっつーの? まあ、そんな感じだ」
見た瞬間心が動いた? 好き? 胸がときめいた?
……いやいや。
「全然分からない」
そんな感じってどんな感じなんだよ。
最後、投げやりじゃん。