「で、どーなんだよ!」


藍原が僕に詰め寄るから、なにが、と言い返しながら肩を押し返す。

顔、近すぎるっつーの。

僕は、藍原と友達になったつもりはないぞ。


ため息混じりに「だから」と告げると、


「確かに三日月さんは可愛い…と思うけど、僕はべつに好きでもないし三日月さんがタイプなわけでもないし、それ以前に藍原にそこまで聞かれる仲でもない」


全部の問いに答えてやった。


──ずきっ

……何だ、今の?

わずかに胸の奥がチクリと痛んだ気がした。


ていうか、全く返事がないんだけど。そう思って顔を上げると、二人してポカンとした顔をしてるから、


「……き、聞いてた?」


声をかけると、猫騙しにでもあったようにパチッと瞬きをしたあと、ああ、と頷いた。


「ほんとに三日月さんに興味ねぇの?」

「だから、ないって」

「ふーん、ならいいけど」


ホッと安堵したような表情を浮かべて壁に背持たれる。

これで、ゆっくり文庫本読める、そう思って表紙を開こうとすると、でもさ、声が聞こえて手が止まる。


「恋したことねぇって人生の半分も損してるぞ」


終わったと思った矢先また話が戻るから、さすがの僕はうんざりした。
けれど、その場から逃げることもできずに、黙って聞いていると、