どうしてここで三日月さんが出てくるんだよ。


「ほらー、三日月さんってめちゃくちゃ可愛いって有名じゃん?」

「だ、だからって僕がなんで」

「だってほら、今、可愛い子指でさしただろ? そうなると三日月さんもタイプってことになるよなーって思って」


いや、待て待て待て。僕は、たった今、こういう子が可愛いタイプに含まれるんだって知ったんだぞ? それなのにどうして三日月さんがタイプになるんだよ。

それこそ、


「ありえない……っ!」


勢い余って答えると、それが藍原の逆鱗に触れてしまったのか「ありえないって何だよ!」僕に詰め寄って。


「三日月さんはめちゃくちゃ可愛いじゃねぇか。おまえだってそう思うんじゃねぇの?! だから、このモデルの子に指さしたんだろ! なぁ、どうなんだよっ!」


どこからツッコめばいいのか迷っていると「あのさー」ふいに隣から聞こえた声に、三人一斉に視線を向けると、


「それ、そろそろ返してもらってもいい?」


苦笑いで女の子たちが、雑誌へと指をさす。


うわ、最悪な場面見られてた!そう思って固まっていると、「あー悪い悪い」雑誌を掴みながら、女の子へ謝る小武。

僕とは対照的で、女の子への接し方も慣れている。世間一般では、こういうやつがモテるんだろうな。そう思った。