人を好きになったことがないからって悪いのか? 誰かに迷惑でもかけたのか?
僕は、自分の意思でこの生活をしてきたんだ。
「じゃあ誰も好きになったことないのか?」
「…そう、だけど」
さっきまで拗ねていた藍原が「ふーん、へーえ」と何か言いたげな様子で、僕をじろじろ見る。
その姿は、気持ち悪いったらありゃしない。
「じゃあさ、どんな子がタイプとかも分かんないの?」
小武に尋ねられて、うーん、と考えるけれど。
「ない、かな」
好きなタイプって言われても、そもそも僕女の子とまともに接したのって三日月さんくらいだし…
「じゃあ、可愛い系か綺麗系だと?」
「え? ……いや、その前に僕が選ぶ側ってのがおかしい気がするんだけど」
「まあまあ、とりあえず」
可愛い系と綺麗系?
そんなの考えたこともない。ていうか、そもそもどこからその基準になるのか分からないし。
「どっち、なんだろう…」
それ以前に、話題の中心に自分がいてそわそわして落ち着かない。
できることなら早く文庫本を開いて落ち着きたい。
元の生活に戻りたい。