「もしかして照れてるの?」


からかうことをやめない彼女に「違う」と否定した僕の言葉なんて信憑性なんか一つもないけれど。


「こ、これは、夕陽のせいだ……!」


僕が、照れているからじゃない。

夕陽のオレンジ色が僕めがけて反射してくるから、そう見えるってだけであって。

そんな僕を嘲笑うかのように、ふーんへーえ、とわざとらしく声をあげる。


「な、なんだよ……」


ドギマギする僕に「ううん、べつに」と首を振ったあと、


「じゃあ、そういうことにしておこっか」


まるで僕の言葉を嘘だと見抜いた前提で、嘘に付き合ってあげるとでも言いたげな言葉を落としたのだ。

そのあとは、何事もなかったかのようにくるりと窓の方へと視線を戻した三日月さん。


なんだかそれが悔しくって、


「……僕ばっか、損してんじゃん」


ボソッと呟いた言葉は、開いていた窓へと吸い込まれて消えた。