「──あっ、見て!」
ふいに、立ち上がると窓の外へ指をさす。
感情に困惑しながら、つられるように僕は視線を向けた。
すると、窓から見える空の景色が。夕陽のオレンジ色と空の青色の境い目が、絶妙なコントラストで。
「……すごっ」
確かに綺麗で、思わず声がもれる。
そしたら、僕を見て「ね」と笑った。
「雲もオレンジ色で、すごく綺麗だね」
心がからっぽになって、空の景色に夢中になる。
今までこんなことなかったのに、三日月さんに出会ってからよく空を見上げるようになった。
おもむろに窓の鍵を開けた三日月さん。
むわっ、とした生ぬるい風が入り込むと、彼女の髪の毛が軽く揺れる。
たったそれだけのことで、暑さなんて気にならなくなる。
「あの雲、アイスクリームに似てない?」
「……そう?」
「絶対そう。しかもオレンジ味のアイスクリーム!」
空のキャンパスに夢中になる彼女の横顔は、とても楽しそうで。
気が緩んだ僕は、ふっ、と声がもれる。
それに気づいた彼女は、くるりと僕の方に振り向いた。
「なに?」
「いやっ、なんかおかしくって…」
「もしかして私のこと言ってる?」
不満そうに頬を膨らませた。彼女は、リスのようで。全然怖く見えない。