「そういえば、文庫本返したときに栞見つけたんだけど」
僕があからさまに話題を逸らすと「…栞?」と、まだピンと来ていないのか首を傾げる。
僕が取り出そうと思ったけれど、彼女が僕の席に座っているせいでそれは不可能だったから。
「机の中、覗いてみて」
僕の引き出しに指をさすと、困惑しながらも中を覗いた。
すると「─あっ!」声をあげて、机の中に入っていた栞を掴んだ。
「……これ、私のだ!」
「あ、やっぱり」
最近、この本を貸したのは、三日月さんと藍原だけで。その二人のうち、四つ葉のクローバーを見つけたのは三日月さんしか思い当たらなかったから絶対そうだと思っていたけれど。
「失くしたと思ってたけど文庫本に挟んであったの?!」
「うん、らしいね」
返すときまで僕も気づかなかったけれど。
「よかった〜…」言いながら、栞を両手で握りしめて、おでこをくっつけた。
「…そんなに大事なの?」
「そりゃあもうかなり!」
興奮気味に、だって、と言いながらガバッと顔をあげると、
「人生で初めて四つ葉のクローバー見つけたの! 私の人生と同じくらい大切なんだから」
「人生? …それは大袈裟でしょ」
鼻で笑うと、それくらい私にとって大切なの、と告げるから。