「じゃあ、信じる」
彼女から紡がれた言葉は、そんなもので。
「は? いやだって今…」
全然、信じてなかったじゃん。
僕を、疑ってたじゃん。
それなのに、なんで?
「向葵くんがそこまで言うならほんとかなぁって思って」
「そんな簡単に信じていいの?」
「だって、向葵くんだもん」
全然、理由にならない言葉を告げたあと、
「今までは緊張したりするとすぐ目を逸らしてたのに、今だけは堂々と目を見て言ってた。だから、嘘ついてないって思ったの」
「なんだよそれ……」彼女の言葉で気が抜けると、一気に全身から力が抜けて、その場にへたり込む。どっと疲れが落ちて来る。
「それより日直の手伝いは終わったの?」
「あー、うん…」
第一、三日月さんがこんなところにいるから僕がスマホを確認するはめになったんだからな。
それで、僕は濡れ衣を着せられるところだったんだけれど。
「なんで、ここにいんの?」
「へ?」
「だって僕、放課後は用事あるって言ったじゃん」
僕たちは、お互いを待つような関係じゃない。普通ならメッセージをみて帰るだろ。
それなのに、彼女は僕の席で寝てた。
僕を待つ理由なんかないはず。
ただの、友達でそれ以上でもなければそれ以下でもないのだから。