何も言わない僕に困惑して首を傾げたあと、またまぶたを擦りながら、それより、と僕の言葉を待たずに、
「かがんでどうかしたの?」
「え? あ、えっとこれを…」
彼女にスマホを掲げると、え、と驚いた声をもらした。みるみるうちに表情は険しくなって、
「もしかしてそれで寝顔とか写真撮った?」
何を告げられたのか一瞬理解できなかったけれど、彼女の軽蔑する眼差しを見て、あらぬ誤解を招いていることに気づく。
慌ててスマホを床に置いて、
「誤解! それ誤解だから!」
「何が誤解なの?」
「写真なんかほんとに撮ってない。手から滑って落ちただけだから!」
濡れ衣を被るのだけは勘弁だ。
もしほんとのことを言っても信じてくれないようなら、
「僕のスマホ確認すればいいだろっ」
床に置いていたそれを掴んで、ズイッと彼女の前に突き出すと、困惑したように表情が崩れる。
「三日月さんの気が済むまで確認していいよ」
だって僕には、やましいことなんて何一つないのだから。
こういうときは、堂々とすることが大事だ。
「ほんとにいいの……?」
「うん」
僕は、無実だ。だから、逃げも隠れもしない。
スマホ一つで僕の無実が証明されるのなら、安いものだ。