両腕で枕を作って、まぶたを閉じて眠っている三日月さんは少し幼く見える。
僕の気配に気づくこともなく、心地良さそうに眠る寝息。微かに聞こえて、僕の鼓動を小さく揺らす。
起きているときは明るくて少しうるさいくらいなのに、眠っていると静かすぎて落ち着かない。
違和感さえ感じてしまう。
けれど、三日月さんの寝顔が……
……なんか、可愛くて。
思わず、手を伸ばしかけた。
──ガシャンっ
僕の手からずり落ちた四角いそれは、床に、音を立てた。
その音に、僕の伸ばしかけた手を引っ込めた。
「うわ、やば」小さな声をもらしながら慌ててかがんでそれを取ろうとする。
「……ん〜…?」
まぶたを擦りながら声をもらす彼女に、ビクッと肩が上がる。
起きるな起きるな、と念じながらゴクリと息を飲んでいると、
「……向葵…くん?」
声が聞こえて、わずかに顔を上げると、まだ焦点が合わない瞳で、ぼんやりと僕を見つめていた。
寝起きだからかいつもより緩んだ瞳に、どきっ、と胸を鳴らした。
「なに…してるの…?」
「あー……えっと…」
ただ一言、落としたスマホを拾おうとしてた、そう言えばいいのに。話しかけられたことによって頭が真っ白になった僕は、言葉に詰まってしまう。