* * *

HRが終わって、帰ろうとしているとき。


「茅影、ちょっといいか」


先生に呼び止められて、手を止める。


「今日今から時間あるか?」


咄嗟に頭に浮かんだのは、三日月さん。

べつに好きとかそんなわけじゃないけれど、最近放課後は三日月さんの青春に付き合うために一緒にいるようになって。


「プリントを留めてもらう作業なんだが、何か予定でもあったか? それなら無理にとは言わないが」


先生はそう言ってくれたけれど、三日月さんの予定を優先しなくちゃならない理由なんか一つもなくて。


「はい、大丈夫です」


そしたら先生は、準備ができたら職員室に来てくれ、と言い残して教室をあとにした。


先生がいなくなってから僕は、三日月さんのメッセージ画面を開く。


【ごめん。今日日直で放課後残らないといけないから、先に帰ってて】

と、簡潔にメッセージを送った。


すぐに返信はないだろう、と考えポケットの中にスマホを突っ込んだ。

それからかばんを席に残したまま、僕は先生のあとを追いかけた。