「違うなら、生徒会の方に落とし物として届けるけど…」

「それ、僕のです!」


咄嗟にそう告げると、「そうなの?」困惑しながら、僕を見る女の子。はい、と返事をすると、じゃあ、と言って手渡される。


放課後に三日月さんに確認してみよう。


「それにしても四つ葉を栞にするなんて茅影くん、よっぽど読書が好きなんだね」

「あー、いやそれは…」


僕のではない、と否定しようと口を開きかけたけれど、ほんの数秒前に自分のだと言い張って受け取ったことを思い出し、のどの奥へ押し込んだあと。


「初めて四つ葉のクローバー見つけたから」


取ってつけたような言葉を落としたら、へえそうなんだ、と笑って、


「じゃあきっといいことあるね」


そう告げられて、そういえば三日月さんもそんなこと言ってたなぁ、と記憶が手繰り寄せられる。


「……いいこと?」

「四つ葉のクローバーって“幸福”って意味があるでしょ。だから、きっと茅影くんに幸福が訪れると思うよ」


僕に幸福が……か。
実際のところ、どうなんだろうなあ。

これを見つけたのは三日月さんだし。


「女の子ってそういうの信じるの?」

「四つ葉のクローバー見つけたときってなんか嬉しくなるでしょ? やっぱり、見つけたら幸福になれるって思うからじゃないかな」


確かに、滅多に見つからないから見つけたい、みたいなこと三日月さんも言ってたような気がする。