そしたら目立つやつらが僕をからかいに来るのは容易に想像できる。
僕は、僕の世界を守りたいだけだ。
ただ、それだけでいい。
そこからはみ出そうなんて微塵も思っていない。
暗い谷底で、ひっそりと暮らしていけたらそれでいい。
それ以上は望まない。
「向葵くんが何を言っても私、もう呼び方変えるつもりないからね」
それなのに三日月さんは、意外と頑固らしくて、言い合いは平行線を辿る。
「それとさ、やっぱり私、向葵くんと仲良くなりたい!」
今まで名前を呼ぶとか呼ぶなと口論していたのに、突然切り替わる話題についていけず、
「いや、なに言って…」
「なにって友達になろう!ってお誘い!」
「……やだよ、そんなの」
僕は、みんなみたいに軽くない。
あいさつを交わすようなトーンで友達になろう、だなんて僕が頷くわけないだろ。
「……きみみたいな明るい人には僕の気持ちなんて分かりっこないよ」
僕ときみの住んでる世界は違う。
僕が影なら、きみは光だ。
そんな二人が友達になるなんてそんなの不可能だ。
「明るい人ってなに? 僕の気持ちってなに?」
濁りのない純粋な瞳で、僕を見据える。
だから、先に逸らしたのは当然僕で。
「……きみは、知らなくてもいい」
これ以上、仲良くするつもりはない。
僕は今も、そしてこれからもずっと一人でいい。