「すみません。これ返却なんですけど」


図書室には、同い年の係りの女の子がいた。


「ここに名前とクラス記入お願い」

「分かりました」


それなのにどうして僕は敬語を使ってしまうのだろうか。
女の子と話すのはすごく緊張する。

……確か、三日月さんのときも最初の頃は緊張してたっけ。

あれ。でも、三日月さんの場合は僕が何を言ってもめげないというか終始付き纏われていた感じがして、緊張どころではなくなったんだったような。


「書き終わった?」

「え? …あ、はい」


記入が終わると、文庫本を女の子に手渡した。そしたら確認をしだす。節目がちな瞳と、長いまつげが視界に映り込んだ。

そういえば、三日月さんもまつげ長かったような気がする。


……僕は何を考えているんだ!

べつにそんなのどうでもいいんだよ!


「──あれ。これ、きみの?」


文庫本を確認していた女の子が、僕の前に差し出したのは、栞だった。

それも、四つ葉のクローバーの。


これってもしかして……

あのときのクローバー?


いやでも、僕の後に藍原に貸したから三日月さんだけとは限らないよな。

でも、まさか藍原がこんな乙女みたいなことするか……?

文庫本を読み終わってとるつもりが忘れてそのままになってたとか?