「おーい」


突然、廊下の方から声がしてみんな一斉に視線を向けると担任の先生がいた。


「今日の日直は誰だった?」


先生がそう尋ねると、どこからともなく、茅影です、と声が上がる。

その瞬間、日直であることを思い出し、ガタッと思い切り立ち上がり、返却する文庫本を手に取って、


「じゃあ僕はこれで」

と、二人に慌てながら言って先生の元へと駆け寄った。


……嘘だ、あり得ない。

僕が日直のことを忘れたことなんて今まで一度もない。


「今日の日直は茅影だったか」

「はい、すみません」


小さく頭を下げると、いやいいよ、とニコリと笑ったあと、職員室までプリント取りに来てくれるかな、と告げられて僕はそれに頷いた。

けれど、手に持っていた文庫本のことを思い出し「あ」と声をもらすと、どうかしたかね、と尋ねられる。


「すみません、これ返却が今日までだったので先に返して来てもいいですか?」

「おお、そうだったか。じゃあ先生は先に行ってるからあとで取りに来るように」


僕に軽く手をあげると、スリッパの音を鳴らしながら職員室へと向かった。

踵を返した僕は、図書室へと走った。