なんの脈絡もなく告げられて、困惑する藍原よりも僕の方がうんと驚いて、え、と声をもらす。


「え、って。俺たちもう友達じゃん」


そう言って歯を見せて笑った小武。


……僕たちが友達?

小武は一体何を言ってるんだ?

そもそも僕たちは、


「……友達じゃないじゃん」

「なんで?」

「だって、僕は元々一人だし……」


今までは一人なんてなんともなかった。

むしろ一人の方が楽で心地よかったはずなのに、それを口にすると現実を突きつけられたようで心が小さく痛む。

まるで小さな棘がささったかのように。


「元々はそうかもしんないけど、俺たち最近よく話すようになったじゃん」

「そりゃ、そうかもだけど……」


僕は、友達になんてなったつもりはない。

それなのに、俺は、と口を開いた小武。


「茅影がどんなやつなのか、ずっと気になってた」

「え」

「いつも机で本読んでるし、話しかけてもあんま返事ないし、もしかしたら一人が好きなのかなって思ってた」


短く息を切ったあと、でも、と続けると、


「グループでいるやつらのこと目で追ってた。それ見て、“もしかしたらほんとは話したいんじゃないかな、一人は嫌なんじゃないかな”そう思うようになって。それが気になったから声かけてみたんだ」


口元を緩めながら、そんなことを紡いだ。