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「おい、茅影。これ」
僕の机の前にやって来たのは、藍原で、その手にはこの前僕が貸した文庫本があった。
「え、なんで藍原が…」
「さあ。よく分かんねぇけど三日月さんが、茅影に渡してくれって」
もしかして僕が話しかけないでって言ったりしてるから気を遣ってくれたのかな。
ふーん、と興味なさげに返事をしながら文庫本を受け取る。
「もしかして三日月さん、俺のこと気になりだしたのかなー」
髪の毛をくるくると弄びながら、聞いてもいない三日月さんとの話を持ち出してくるけれど、興味がなかった僕は、視線を落として、へえ、と適当に相槌を打った。
「なんだよ。もうちょい興味持てよ」
「え? あー、ごめん。全然興味なかったから」
藍原の色恋的な話を聞くほど、僕たちは仲良いわけじゃないし。
ここでくつろがれても迷惑だ。
なんて思って、頬杖をついていると、おまえさぁ、と壁に背を預けながら、
「堂々と本音晒すなよ」
と、ふはっと笑われた。
……いやいやいや。なんだよこの状況。
困惑して固まっていると、なんだよ、と尋ねられる。
けれど、本音を言うこともできなくて、いや、と首を振った。