* * *

「うわー、きれー」


展望台につくと、三日月さんは声を張り上げた。

その姿を僕は後ろから見つめた。

まるで、小さな子どもが楽しそうにはしゃいでいるような姿に見えて。


「…かわい」


思わず、口をついて出た。


………ん? 今のなんだ? は? 僕が誰を可愛いって?

いやっ、今のは何かの間違いだよな…?!


フェンスに手をつきながら、んー?と僕の方へ振り向くと、


「向葵くんどうかしたの?」

「いやっ、なにも!」


首がもげそうなほど振って否定すると、ふーん?といまいち納得してない顔色を浮かべながら、また景色へと視線を戻す。


……あっぶない。もう少しで聞かれるところだった。


ていうか、僕は何を考えていたんだ。

可愛いってのは、ただ単に子どもみたいに見えただけであってそれ以上でもそれ以下でもない……よな?

なんで自分の言葉で動揺してるんだよ。


「向葵くんもこっち来ればー」

「え?! …ああ、うん」


ぎこちなく返事をしたあと、おそるおそるフェンスへ近づくけれど、三日月さんから距離を取った。


それなのに妙な胸騒ぎが落ち着かない。

高台に来たからか? 子どもの頃は大丈夫でも今はダメになったとか?


「向葵くん?」


声がやけに近くで聞こえるなと思って顔を上げると、僕に距離を詰めていた三日月さんの顔がドアップで視界に映り込んで。