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「──あ、そうだ。藍原くんから本渡されたんだけど」
放課後の帰り道、なんの脈絡もなく告げられた言葉に、え、と困惑した声をもらしながら顔をあげる。
「……もう、本渡されたの?」
「…? うん、そうだけど」
え、だって僕が藍原に本を渡したのは昨日の休み時間なのに、もう読み終わったのか?
ていうかそもそも藍原が本を読むようには思えなくて、読み終えるとも思わないけれど。
「向葵くんが渡す時間がないからって藍原くんに頼んだって言ってたけど、そうなの?」
「え?」
……あいつ、そんな嘘ついたのかよ。
「あれ、違った?」
けれど、ここで否定してもまた藍原にあとで何か言われても面倒くさいしなぁ。
「…あ、うん、そうだったかも」
不本意ではあったけれど、頷くほかなかった。
そしたら、へぇそっかぁ、と笑って、
「もしかして藍原くんと仲良くなったの?」
「いや、それはない」
僕はきっぱりと即答した。
藍原と仲良くなんて一生かかっても無理だ。
そんな僕の返事に、ふーん、と大して興味なさげに答えたあと、
「でも、もしかしたら藍原くんはそうじゃなかったりして、ね」
「……え」