それから僕が眠るのに時間はかからなかった。
気がつけば、真っ白な空間の真ん中にベッドが一つだけ置いてあって、僕はそこで眠っている。
ふわふわで、もこもこで。
まるで雲の上にいる気分で思わず頬が緩む。
「ねえ、向葵くん」
ふいに、聞こえた聞き覚えのある声。
三日月さん……?
そう思っても、眠たすぎて瞼が上がらない。
どこにいるんだろう?
僕の肩に、わずかに重みが加わる。そして、温もりも。
だから僕の後ろにいるんだと思った。
なに、返事をしようと思っても、のどの奥から声が出てこない。
そんな僕をよそに。
「向葵くん、あのね──…」
彼女が口を開いたけれど、そこから先は何も聞こえなくて。
──そこで、意識はプツリと途切れたんだ。