思わず、握りしめている缶ジュースに力が入る。


「──ほっとかない」


それなのにきみは、言った。

真っ直ぐな瞳を見据えて。


「私、向葵くんのことほっとかない。だって、なんか気になるんだもん」


曖昧に言葉をはぐらかす。

そんなんじゃ全然、


「意味、分かんないし…」

「うーん、だってほんとによく分からないの。分からないけど、向葵くんのこと気になるの」

「てか、その呼び方やめてよ」


冷たく拒否るけれど、いーじゃん、と言ったあと、


「それに今さらでしょ?」


なんてわけの分からない言い訳を落とす。


「…意味分かんない」


ほんと自分勝手な人だ。

こういう人、僕は苦手だ。

まるで土足で自分のテリトリーに踏み込まれている感じがして、警戒してしまう。


「じゃー、あれだ!」


僕に向かってビシッと指をさすと。


「無意識に運命が引き寄せられた、とか!」


なんて、ポエムのようなことをマジな顔で告げられるから。


「……バカなんじゃないの」


冷たく、突き放す。


……ほんと、バカ。

でも、自分もバカだ。

だって僕は今、少し、ほんの1%、気持ちが揺れてしまったから。


「初対面に向かってバカとか辛辣だなー」

「初対面に運命とか言う人もどうかと思うけど」


矢継ぎ早に言い返すと、へえ、と僕の顔を見てニヤニヤと笑う。