僕は、ずっと一人だった。感情なんて心の奥底に閉じ込めて、寂しい、なんて感情は見てみぬフリをして。
そんな僕に誰も近づこうとしなかった。
それでよかった。
「もう〜、やっぱり向葵くんは素直じゃないなぁ」
「……うるさい」
それなのに三日月さんだけは違った。
僕を、見つけてくれた。
僕を、茅影向葵として接してくれた。
周りの人と分け隔てなく同じように。
それが、素直に嬉しくて。
だけど、素直になれなくて。
気持ちとは裏腹の態度をしてしまう。
「ねえ、向葵くん」
ふいに、僕の名前を呼ぶ。
瞬間、カサッ、わずかにカーテンが揺れた。
風のせいだろう、と毛布から顔だけを覗かせると、隙間からは手のひらが僕の方へ向いていた。
どうやら風のせいではないらしい。
「……なにしてるの」
彼女の意図が読み取れなくて、その手を見つめていると、
「握手しようよ」
「……は?」
突然告げられた言葉に、ポカンと気が抜ける僕をよそに「お見舞いに来てくれてありがとうの握手!」と彼女は続けた。
お見舞いって、僕が……?
いや、確かに心配はしたけれど。
「……やだよ」
握手なんて恥ずかしくてできやしない。
「ちょっと向葵くん! 今の流れは握手するところじゃん。恥ずかしがってないで早く!」
「だから嫌だって」