「向葵くんってばおっかしぃ〜……っ!!」


毛布をバタバタと叩いて、お腹抱えて笑っている様子。見えなくても容易に想像できた。


「……僕、もう帰る」


羞恥心に耐えかねて、見舞いなんて来るんじゃなかった、と後悔しながら立ち上がると「あっ、ちょっと待ってよ」声一つで僕を引き止める。

どうせ、ここにいたってからかわれるだけだ。


「向葵くん怪我の治療はよかったの?」

「……なんで?」

「え、だってさっき怪我したって言ってたじゃん」


しまった、そう思っても後のまつりで。今さら誤魔化したところで手遅れだと思った。


「やっぱり嘘だったんだ?」


そう尋ねられて、答えられなかった。そんな僕にとどめを刺すように、じゃあ、と口を開くと、


「私を心配して来てくれたんだね」


けれど僕は、肯定も否定もしなかった。

どっちを答えたところで僕が勝てる保証なんてどこにもなかったから。


ボフッ──、と毛布が潰れる音がしたあと、ふーんそっかぁ、と嬉しそうな声色が聞こえてきた。

また何か言われるに違いない、と気を引き締めて、


「な、なに……」


意を決して尋ねる。