「サッカー?」ピンと来ない様子で、うーん、と考えたあと、ああ、と思い出したように、
「そういえば男子はクラスで分かれてサッカーしてたよね。その中に向葵くんも走ってたっけ」
……うわ、最悪だ。
「……見てたんだ」
思わずボソッと呟くと、もちろん見てたよー、と僕の言葉を聞いて楽しそうに声を弾ませたあと。
「向葵くんが、ボール奪われたところも見てたよ!」
なんて、僕の失敗したところをわざと強調して言うから。
「奪われたんじゃないし! 奪わせてあげたんだし! 第一僕は、団体で競技するスポーツが苦手なだけだから!」
カッとなって言い返すと、へえ、とクスクス笑った。
「運動嫌いな人ってそう言うよね」
「ほ、ほっとけ……」
大体、なんで僕にパスなんて回すんだよ。
三日月さんにかっこいいところ見せたいから、なんて藍原の身勝手な気持ちで、僕は失態を晒すはめになった。
今まで一度だってパスを回されたことないのに。僕がスポーツ嫌いなのみんな知ってるだろ。
ていうか、
「……九人でボール蹴って逃げ回って何が楽しいっていうんだよ」
ぶつくさぶつくさ文句を言っていると「プッ」笑い声がカーテン越しに聞こえるから、ムッとして。
「……なに?」
「いやだって、独り言にしては大きいなぁと思って。しかも、言い方が……」
フククッ、と笑いを堪えながら「ボール蹴って逃げ回ってって……」僕の言葉を復唱するから、だってそうだろ、と言い返すと。