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隣のクラスに転校生がやって来たと噂になってから、早くも一週間。
可愛いとか、元気があって明るい、とか人懐っこい、とあらゆる噂が僕の耳まで入ってくる。
大体、二年の六月という中途半端な時期に転校生って違和感しかない。何か、前の学校でやらかしたとか……
「茅影(ちかげ)も三日月さん一度は見に行った方がいいぞ」
クラスメイトに声をかけられるけれど、とても乗り気にはなれなくて。
「いや、僕はべつに…」
開いたままになっていた文庫本へと視線を落とす。
「そんなこと言ってないで一緒に見に行こうよ。すっげー可愛いんだぞ」
「誘ってくれてありがたいとは思うけど、ごめん…」
僕は、心にも思っていない言葉を言ったから居心地が悪くて。
「そんなんだから周りのやつらに暗いとか影が薄いとか言われるんだぞ?」
「影が薄いのは事実だから、さ…」
クラスメイトで唯一声をかけてくれる小武圭太(こたけ けいた)。
べつに悪い人ではないけれど、だからといって僕にとっていい人なのかは別問題。
「おい、小武。茅影に声かけても無駄だぞー! なんて言ったって、そんな活字ばっかの本読んでるようなやつなんだから」
ドアの前から大きな声で、そう告げる。