特別な連絡事項だとか配布物の類が無ければ、ホームルームなんていうものは一瞬で終わってしまう。

 日直当番の号令を合図にガタガタと席を立ち、部室へ、グラウンドへ、もしくは家へ、それぞれがそれぞれの場所へと散る。

「ごめん、ほんとあとちょっとだから待てる?」と手を合わせてきた雨宮と、「そんな急がなくてもいいけど」と答えた俺は、再び椅子に腰を下ろした。

 俺自身この後はと言うと部活だけれど、着替えるために部室に行っても結局そこでだらだら喋っている時間がいつも無駄に長いのだ。だから多少そこに遅れた所で特に問題はない。

 先輩達が揃って引退してからというもの、どうにも部の空気が緩んでいる。上に立つ人がいなくなった以上、仕方のないことなのかもしれない。そしてまた自分達2年生と後輩の1年生の距離感が妙に近く、馬鹿みたいなことで笑って一緒になって騒いでいる。
 
 要するに、運動部の割りにはゆるっとしている部ということになるらしい。だから、部活に手を抜いている適当な奴ら、なんてよその部の連中から裏で言われていることもある。

 確かにハードだとかキツいだとか、そういう雰囲気からは縁遠いのかもしれないけれど、かと言って部外者からあれこれ言われる筋合いもない。練習そのものは自分達なりに真剣にやっている。