「ずっと、さくらのことが好きだった」

 少し苦しそうに微笑んだ清一様の声が、わたしの胸を貫く。

「わ、たし、は……」

 不必要なことは話さないように。求められたこと以外には答えられないように。

 酒呑みだった実の父が生前にわたしに教えたことはそれだけで。父の姉に引き取られて成長していくなかでも、わたしはその教えを馬鹿みたいに忠実に守った。

 上の人の指示には逆らわなかった。不必要な言葉は口にしてこなかった。それは、わたしに優しくしてくれる清一様の前でも同じだった。

 でも、今は──。今だけは、わたしの言葉を口にしてもいいだろうか。

 生涯で、たった一度きりにするから。

「わたしは清一様のことをずっとお慕いしています。初めて貴方にお会いしたときからずっと……」

 わたしは貴方のことが好きです。

 言葉を詰まらせたわたしの肩を、清一様が引き寄せる。

 わたしの髪に桜の花の髪飾りをさすと、清一様が掠れた声で囁いた。

「ありがとう、さくら」