普段見慣れないスーツ姿が大人っぽくてかっこいいな、なんて。
あたしは呑気にそんなことを思って見てたけど、自己分析だとか、企業研究だとか、エントリーシートを何社に送っただとか。お兄ちゃんが食事のときに叔父さんや叔母さんにする話は難しくて、何だか大変そうだった。
お兄ちゃんなら、就職なんてすぐ決まるんだろうな。
勝手にそんなふうに思ってたけど、そう簡単にはいかないのが現実らしい。
そのせいか、最近お兄ちゃんはいつもちょっとピリピリしてたけど、今日は何となく纏う雰囲気が柔らかい。
「いいことあったの?」
「わかる? 俺、内定決まった」
何気なく聞いたら、お兄ちゃんが弾むような声で返してきた。
「内定?」
よくわからずぽかんとするあたしに、お兄ちゃんが笑顔で頷く。