「ちっこい手。やっぱ、ガキじゃん」

 揶揄うように笑うお兄さんに、ますますむっとする。
 でも、お兄さんの大きな手に包まれたあたしの手は、確かに小さくて。何も言い返せなかった。

「ほら、帰るぞ」

 迷子の手を引くみたいにして、お兄さんが歩き出す。
 その直前、あたしを振り返ったお兄さんの眼差しがとても優しかった。
 そのことを、あたしはきっと一生忘れられないと思う。だって、それがあたしの初恋だったから。