今目の当たりにしている事実が信じられなくて、ふらふらとした足取りで階段を降りてリビングの叔母さんのところに向かう。
「叔母さん!」
「あら、おかえりなさい」
今はもうよく思い出せない。けれどかつては母に似ていると思った、叔母さんの穏やかな優しい声があたしを迎え入れてくれる。
目を細めて柔らかに笑いかけてくる叔母さんを、あたしは泣きそうな顔で見つめた。
「お兄ちゃんは?」
まさか、もう行ってしまった?
あたしに黙って。さよならすら言わずに。
あたしは何も聞いてない。
泣かないように手のひらをきつく握りしめるあたしに、叔母さんが小さく首を傾げた。
「あら、その辺で会わなかった? コンビニに行くとか言ってたけど」
「コンビニ……」
それを聞いた瞬間、あたしはすぐに家を飛び出した。