それから五年間、私の心はときめかないでいた。
度重なる失恋を経て、心の壁は分厚くなっていった。
いいな、と思う人がいても、なぜか警戒するようになってしまったのだ。恐るべし、人類の防衛本能。
仕事のできる上司はきっとマザコンで、久しぶりにメールしてきた高校時代の同級生はおそらく新興宗教にハマっていて、行きつけのコンビニの笑顔が素敵な店員さんは多分借金まみれだ。
次こそは絶対にいい恋をするぞ。そう心に誓っていた。
この誓いが通算三回目であるということについて、質問や意見は一切受け付けない。
そして二ヶ月前から、私はとある男性に恋をしていた。
五年ぶり、四回目の恋。
砂漠でオアシスを見つけたように、心は潤っていた。
さっき、イケメン降ってこないかなぁ、とか言ってたのは見逃してほしい。口癖みたいなものなのだ。