大学二年生のとき、私のことを好きだと言ってくれた先輩がいた。
付き合い始めてから三回目のデートで、彼は私のことを「アスカ」と呼んだ。そのことを私が指摘すると、顔をこわばらせた。
しどろもどろになりながらの「あ、いや、明日か明後日は暇?って言おうとして……」との言い訳に、心の中で座布団を三枚投げつけた。そして、思いっきりビンタした。こっちは心の中で、ではない。
その日の夜に、偶然彼のSNSのアカウントのフォロワーを眺めていたら、偶然アスカという名前の女を発見した。
まったくそんなつもりはなかったのに、偶然指が画面をタップした。
さらに私は手を滑らせてしまい、これまた偶然「ばーかばーか」と書かれたメッセージが相手に送られてしまった。不可抗力だ。
二回連続で不運を引き当ててしまったが、それでも私の心は折れなかった。
きっとその分、素敵な彼氏ができると思っていたのだ。
そうやって三度目の正直を祈っていたのだが、二度あることは三度あるのだ。
私の悲劇は終わらない。
大学三年生のときに好きになったのは、バイト先の高校生。
健気に働く姿にきゅんときたのである。なんだ、年下もいいじゃないか。そんなことも思った。
シフトが被る度に、趣味でよく焼いているという設定のクッキーをあげて餌付けしていたら、裏でクッキーババアと呼ばれていた。
その事実が判明した日、彼にあげる予定だったクッキーは持って帰って一人で食べた。クッキーはしょっぱかった。砂糖と間違えて塩でも入れたのだろうか。