「ああ、やっぱり勘違いしてた……。僕に彼女がいるって思ったとき、どう感じました?」
彼は少し意地悪な顔で私に聞いた。
「別に。今言った通り、素敵なカップルだなぁって思いました」
目は口ほどに物を言う。私も嘘をつくのが下手だ。
悲しかったし、ショックだったし、全身の穴という穴にアロンアルファ流し込んでやろうかと思った。
「これ、もしよかったら」
そんな私の心中を察してか、楽しそうに笑った彼が渡してきたのは、サボテンの鉢植えだった。その際に目に入った彼の腕の血管を見つめながら、私はそれを受け取った。
「いつも晩ご飯のおすそわけとか、してもらってるし」
「いえ。そんな。私が好きでやってることですから」
って、待って今のなし。失言! あれはたまたま作りすぎちゃったって設定だから! 全然好きでやってるわけじゃないんだからねっ!
「あ、実はこのサボテン、妹に選んでもらったんだ。女性に何プレゼントすればいいかなんてわからなくて……。なんとなくとげとげしいから贈り物としてどうなのかなって思ったんだけど、妹は絶対これにすべきだって言ってて……。もし気に入らなかったらごめん」
しかし、須藤さんは私の失言に気づくことなく、言い訳がましく付け足した。なんだか少し緊張しているような気がする。
「そんなことないです。全身全霊をかけて一生守り抜きます! たとえ世界の全てを敵に回しても!」
どこかの邦楽みたいなことを言って、渡されたサボテンをギュッと抱きしめる。