「ど……どうやって」
 やっと喉から声を絞り出すが、それだけ発音するのがやっとだった。

「ただ時間をちょっと巻き戻しただけです。神様ならみんなこれくらいできますよ」

 それは魔法のようだった。魔法なんて見たことはないけれど、それ以外にどんな言葉で表せるだろう。

 何らかのトリックを使っても到底不可能な現実を目の当たりにして、私は寒気に包まれた。

 時間を……巻き戻す。

「……」
 今度こそ何も言えなかった。


「あ、さっきの答えですか? 牛乳を暖めたとき表面に膜ができることを、ラムスデン現象といいます」
 そんな少女の的外れな発言は、私の耳をすり抜ける。

 ――私より幸せな人間を、全員消してください。
 ――その願い、たしかに承りました。

 あ、これ人類が滅びちゃうやつだ。
 私の何気ない一言で、生態系のバランスは崩れ、文明は衰退する。

「あの、さっきのお願いなんだけど……」
「ああ、あなたより幸せな人間を全員消すってやつですか?」

「そうそう。それさ、やっぱナシ。冷蔵庫から無限に缶ビールが湧いてくるようにしてください。これに変更で!」

「一度承ったお願いはキャンセルできないピョン」
 ピョンじゃねーよ!