私は、少女と向かい合って少し遅めの昼食をとっていた。

 こんな状況でも空腹は感じるらしく、冷凍してあった食品を適当に暖めただけの簡単なランチを用意する。ちょうど二人分あったので、自称神の少女の分も一緒に解凍した。

 私が電子レンジを使った豪勢な料理を作っている間、少女は微動だにすることなく元の場所に座っていた。

「家の住所は? あと名前」
 昨日食べた二人前の肉じゃがとカロリーのことはいったん忘れて、唐揚げと白米を口へ運びながら、私は少女に問いかける。

「家はあっち」
 上空を指さす少女。そうだよね。神だもんね。そりゃ空に住んでるよね。

「名前はまだない」
「猫かっ!」

「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている」
「坊ちゃんかっ!」

 律儀にツッコミを入れてしまうあたり、私もたいがいだ。
 一体何者なのだろう。話が通じないということ以外、何一つわからない。

 頭が痛くなってきた。
 冷蔵庫から缶ビールを数本持ってくる。まだ昼の三時だが、こんな状況だ。飲まなきゃやってられない。

 一気に飲み干し「あんたも飲む?」と少女に聞く。
 神と名乗る少女にビールを勧めてみる。

「わたしはピッチピチの十六歳だからお酒は飲めないんだ。ごめんね」
 こんな時だけ真面目かよ。

「そっか。ま、私も四捨五入すれば十八歳だけど」
 言いながら二本目の缶ビールのプルタブを空けて、豪快に飲んだ。