私は天乃宮(あまのみや)舞依(まい)。非リア充な社会人四年生。

 『幸せな人間は幸福税として私に毎年一万円ずつ払え』をモットーに、今日もなんとか呼吸している。

 だからって恋愛に対して興味がないわけでも、男が嫌いなわけでもない。むしろその逆。

 恋愛したいし結婚したい。イケメンに求婚されたいし、石油王の妻になりたい。
 要するに、幸せになりたい。

 最近、友人や同年代の同僚の結婚ラッシュで、出費もストレスも殺意も増える一方だ。

 先月も後輩の結婚式があった。
 自分より年下の女の結婚式に出席するたびに、精神的なダメージへの手当てとして十万円くらいが支給される制度が欲しい。

 二次会では余興のクイズ大会が行われたのだが、そこで一問目に出題されたのは『新郎新婦が初めてディズニーランドでデートしたのはいつでしょう?』という、私のメンタルをズタズタに切り裂く超難問だった。
 もしかすると、ここは地獄なのだろうか、という感想を抱いた。ハハッ。

 後輩に、あなたの夫、パンの袋留めるプラスチックの四角いやつみたいな顔してるね、とでも言ってやろうと思ったけど、グッとこらえて、こっそり旦那のものと思われるバッグに新婦の使わなそうな香水をシュッと一吹きするだけにとどめておいた。私は大人なのだ。

 その後のビンゴ大会で当たったクルージングディナーのペア(・・)チケットは、帰宅してすぐにゴミ箱に叩きつけた。

 先輩、おめでとうございます! じゃねえよ。私に七年間彼氏がいないの知ってんだろてめぇ。

 はぁ、私にベタ惚れのイケメンが降ってこないかなぁ。
 今日も世の中の幸せそうなカップルたちを呪いに呪いながら、私は生き延びている。