ある日、世界は一つになった。
各国の首脳が集まった国際会議の場で、国という境界を無くし、一つの世界にまとめることが可決されたのだ。
そうなった理由は、人々が延々と繰り返される戦争に嫌気がさしたからなのか、一つの国では対応しきれない重大な問題が発生したからなのか、はたまたもっと別の理由でなのか分からないが、こうして世界は一つとなった。
それはあまりにも突然のことであったが、人々は歓喜し、世界は喜びの声で溢れていた。
これで未来永劫平和な日々が続く、もう息子が戦争に行かなくてすむ。
人々が喜ぶ理由は様々であったが、誰もがこの日を祝福していた。
人々は皆、世界が一つとなったことで平和な時が永遠に続くと思っていた。
しかし、世界が一つになることと、平和になることは全くの別物だった。
人間とは元来多種多様な生き物である。
そんな多種多様な中でも気の合う似た者同士が集まって、今まで『国家』というものが形成されていた。
そんな国家を無くして一つにまとめてしまったのだから、価値観や文化観の違いから争いが起こるのは必然のことだった。
言い争いといった些細なことから、殺し合いといった重大なことまで、大小様々な争いが各地で発生した。
世界が平和になったと思ったら、今度はいろんな場所で争いが起こっている。
突然に次ぐ突然の展開に人々が混乱し、不安感を覚えるのは無理のないことだった。
そんな中、人々の中から群衆を導くリーダーが各地で現れた。
彼らは人々に、自分の考えに共感する人は自分の後についてこいと言った。
人々は彼らの後に続いていき、彼らは新たに自分たちのための『国家』を樹立することを宣言した。
こうして、世界が一つになったその日の午後には、世界は再びバラバラになっていた。