私には愛する妻がいる。
妻には私からプロポーズした。
その時私は特にお金持ちといったわけでもなかったので、お金では買うことのできない『愛』で結ばれたのだと私は信じている。
妻との間には子どもも産まれ、私たちは幸せな家庭を築いていた。
しかし、そんな幸せは突如終わりを告げた。
私の務めていた会社が不景気の波に飲まれて倒産してしまったのだ。
その結果、私は失業者となってしまった。
私はすぐに新しい職に就こうとしたが、不景気の影響で雇用してくれるところが見つからなかった。
蓄えていたお金もどんどん減っていき、私たち家族は貧しい生活をしなければならなくなってしまった。
家族には申し訳ない気持ちでいっぱいだが、それでも家族の『愛』が尽きることはないと私は思っていた。
しかし、私は今、妻に離婚届を突きつけられている。
私は妻に考え直すよう説得する。
「いきなり離婚なんてどうしたんだよ!確かに家は今貧しくて辛いかもしれないけれど、それでも私たちの『愛』は変わらないだろう?『愛』はお金では変わらないものだろ?!。」
お金なんかに私たち家族の愛が引き裂けるわけがない、これは何かの間違いだ。
離婚届を前にしてそう願っていると、妻が静かに言い放った。
「確かにお金では『愛』は買えないし変わらないわ。
でも、お金じゃ買えないものを守るためにはお金が必要なのよ。」